「高音が苦しい」
「長い間ボイトレしてるのに、いつまで経っても高音が出せない」
「ミックスボイスって結局なんなんだ?」
これはそんな方のための記事です。
高音の発声に必要なコツを4つ紹介します。
僕も10年近くは高音に悩まされながらボイトレしてきた男です。
幸いにも試行錯誤を重ねた結果、今では女性の曲まで苦しいと感じる事なく歌えるようになりました。
元から高音を出せる人間ではなかったからこそ、高音を出すために何が必要なのかを正しくご説明できる自信があります。
この記事を読むと、高音を上達させるコツ、正しい練習の方向性がわかりますよ!
まず結論
4つのコツ
- 高音を怖がらない
- 力まない、脱力しない
- 喉の柔軟性を高める(複数の声の出し方+ビブラート)
- 高音で力みを感じさせない歌手を真似して歌う
高音の上達に必要なコツはこの4つ。これが結論です。
それぞれ順に説明していきますが、その前に・・・
「あれ?ミックスボイスはいらないの?」「ベルティングは?」
必要ありません。最後に説明しますので、いまは忘れてください。
「じゃあ腹式呼吸は?」「鼻腔共鳴は重要だよね?」「喉は開けないと力んじゃうでしょ」
これらも残念ですが、必要ありません。
「腹式呼吸」「鼻腔共鳴」「喉を開ける」は高音を伸ばす手段ではない
鼻腔共鳴や喉を開けるというのは、声質を変化させる手段であって、苦しい高音からは助けてくれません。
歌の中では適した声質が頻繁に変わるので、もしも鼻腔共鳴や喉を開く事ばかり意識していたら、違和感のある歌い方になってしまいます。
「いま、どの声質で歌うのが合っているのか?」を前提に歌い、そのために必要なら鼻に響くような声も使うし、喉を狭める事もあれば広げることもあるんです。
ボイストレーナーの歌を聞くと違和感を感じたり、下手に聞こえる事が多くありませんか?
あれこそ、鼻腔共鳴や喉を開ける事を「正解」として捉えてしまう弊害です。
そして腹式呼吸を含め、意識的に「呼吸」をコントロールする事は喉を緊張させる原因になります。
そもそも高音、更にはロングトーンであろうと、たくさんの息は必要ありません。
だから、それらの直前に息を吸おうとすることすら僕はしていません。
常にニュートラル状態で体の中にある呼気だけを効率良く使う。それだけで十分歌えるんです。
普段何も意識せずに人と話しているのときと同じ状態です。
当然ですが、これらは僕の実体験から語っています。
それぞれ少なくとも3年以上はボイトレに取り入れてきました。
結果は察しの通り、高音も全然楽にならないし、歌も満足に歌えませんでした。
脱線してしまいましたが、4つのコツについて説明していきましょう!
高音のコツ1:高音を怖がらない
「今から高音が来る!」というとき、苦手意識や恐怖心があると、体は高音に向けた準備を始めます。
この「高音に向けた準備」こそ、避けなければいけない事です。
- これからサビで最高音が来るぞ・・・
- 息をたくさん吸っておかなきゃ!
- 裏返ったら嫌だなぁ・・・。気合入れるぞ!
- 高音は上を意識して出すって教わったから、上に向かって出す意識だ!
すべて恐怖心から生まれる意識で、力んで高音を押し出そうとしたり、逆に勢いを弱めてしっかり声を出すことから逃げてしまうタイプの人もいますね。
では、この状態で高音に対する恐怖心がなくして、サラッと高音を歌ってみたらどうなるでしょう。
ほとんどの人は、高音が届かなくなるか、盛大に声が裏返るなど、声が不安定になりますね。
でも、それが正解の状態なんです。
だから、声が不安定にならないように対処するのです。
対処方法は腹式呼吸を練習したり、特殊な発声方法を習得することでしょうか?
いえ、違います。それでは高音に対して何か意識をする事に逆戻りで、いつまでも高音に対する恐怖心が消えません。
正しい対処方法は、高音を怖がらず、何も意識せずにサラッと高音を歌っても、声が安定するようになる事です。
これは可能な事であり、喉の柔軟性が必要になります。
これは3つ目のコツのお話へと繋がります。
高音のコツ2:力まない、脱力しない
高音で力まないようにする事は一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?
確かに力まないようにすることは正しいです。
では、力まないように脱力する方法を探る事が正しいのでしょうか?
いえ、そうではありません。
力まないと高音が出せないから「力み」で解決しているんです。
だとしたら、単純に脱力しても高音が出せなくなるだけですよね。
なので力まないようにはしていく必要がありますが、脱力しようとは考えないで構いません。
脱力を強く意識しすぎると、息が漏れた声になったり、極端に小さい声になったりして、歌う事が余計に難しくなります、
「力まないけど、脱力しない」といっても、その塩梅が少し難しいかもしれませんね。
これには良い目安があります。
「高い!」とは感じない、気楽に歌えるAメロを歌っている状況を想像してみてください。
力まないけど脱力していないのは、ちょうどAメロを歌っている状態です。
それと同じレベルで高音も歌える事が理想。
高音のコツ3:喉の柔軟性を高める(複数の声の出し方+ビブラート)
柔軟性が高まることで、初めて「力み」がいらなくなる
柔軟性が高まると、狙った声(高さ、声量、声質)に対して喉が的確に動くようになります。
つまり、柔軟性は高確率で狙った声を再現してくれるわけですね。
柔軟性が高まったあとに高音を歌うとき、改めて必要だと思っていた「力み」を抜いてみるんです。
すると不思議なことに、声が裏返らずに高音まで滑らかにいける状態に。
さらに、気づけば地声のまま高音へと上げていった先には裏声の感覚が少しずつ入って来る状態になるんです。
僕はその感覚を知ったときに初めて
「みんなが「ミックスボイス」や「ベルティング」と呼んでる声の正体はこれだ」
「10年以上、高音で歌えることを夢見てボイトレをしてきた努力が報われた」
と、確信しました。
複数の声とその出し方を知り、慣れる。
では「柔軟性を高める」とは、具体的にどうすれば良いのでしょうか。
その方法は、複数の声とその出し方を、瞬時にコントロールできるようになることです。
イメージが沸かない方のために、いくつか声の種類に関する質問をしますね。
音の高さは気にせず、それぞれ出しやすい音程というで構いません。
自分ができるかどうか考えてみてください。
まずは初心者レベルです。
これは出来ますか?
- 中間の太さで地声を出せる(細くも太くもない、普通に話す状態)
- 太い地声を出せる(オペラ歌手やクラシックっぽく)
- 中間の太さで裏声を出せる
簡単すぎたでしょうか。
それでは次はどうですか?
- 太い裏声のまま、多少は歌える
- 細い地声のまま、多少は歌える
- エッジボイスを安定して出せる
- 歌の中で、そこそこ安定してビブラートをかけられる
ビブラートで脱落しちゃいましたか?
結構歌える方ならここまでもできると思います。
それでは一気に難易度を上げます。
- 細い裏声のまま、ビブラート付きで出せる
- 地声のがなり声を喉が痛くなる事なく、ビブラート付きで出せる
- 裏声のがなり声を喉が痛くなる事なく、ビブラート付きで出せる
がなり声+ビブラートは例がないとわかりづらいと思いますので、以下にアップしておきます。
地声のがなり声(ガム発声)の例
裏声のがなり声(ガム発声)の例
がなり声で脱落しちゃいましたか?
ちなみに僕も昔、がなり声を1秒出したら出血してるんじゃないかと思うくらい痛くなってました。
「裏声のがなり声」なんて、それがどういう声かすら想像できないかもしれませんね。
「裏声のがなり声」がどういう声なのかなど、これは今後別の記事で詳しく紹介していきます。
繰り返しますが、音の高さは一番出しやすい状態で構いませんよ。
それでも再現できない声の出し方があったのではないでしょうか。
柔軟性の高い喉というのは、複数の声の出し方がコントロールできる状態のことです。
そして「柔軟性が高い=高音も得意」につながる最たる例が、歌うまモノマネ芸人する方たちです。
涼しい顔して歌手本人よりも余裕な表情で歌っている人が、歌うまモノマネ芸人にはたくさんいると思いませんか?
あらゆるモノマネの練習をされてきている方達なので、様々な声の出し方をできる状態である事は容易に想像できますよね。
とはいえ、声質まで特定の人物に寄せる必要はありません。
少なくとも自分の声質で、色々な声の出し方をできるようになり、コントロールできるように慣れていきましょう。
全ての声質でビブラートをかけられるようにする
ビブラートが出来ることは非常に重要です。
なぜなら、ビブラートは歌とボイトレ、どちらにもメリットがあるからです。
・ビブラートが必要な歌は昔も今も非常に多い。
・ビブラートができるだけで上手い、素人っぽくないと思われる。
・ロングトーンの聞き心地が良くなる。
・上手く歌えてる感があり、歌に自信を持てる。
・ビブラートをかけられる=ある程度の余裕を持って声が出せている目安になる。
・ボイトレで常にビブラートをかけると、歌でビブラートをかけやすくなる。
僕はもともとビブラートができませんでした。
好きな歌手があまりビブラートを使わなかったので「僕も必要ない」なんて逃げていた部分もあります。
ビブラートができることはメリットしかありません。
「自分はビブラートなんか必要ない」と思っても、ビブラートは習得して欲しいです。
ビブラートをかけたくないなら習得した上でやらなければいいだけなので、必ず練習しましょう。
高音のコツ4:高音で力みを感じさせない歌手を真似して歌う
声質、表情、緊張感をよく観察して真似する
真似するのは非常に効果の高い練習方法です。
高音になっても全く力みを感じさせないほど高音が得意な歌手っていますよね。
ファンではないとしても、この方たちが非常に良いお手本になります。
その方たちの声質、余裕な表情、緊張感を観察し、その方になりきって歌ってみましょう。
それ以外にも口の開き具合、声量など、あらゆる要素を真似てください。
喉の柔軟性が高まっていて、それを再現できる準備が整った喉になっていれば、その発声方法を真似できる成功率は高いです。
おすすめの歌手
どの歌手が良いのかわからない方のために、私がおすすめする歌手を紹介しておきます。
まずは男性歌手です。
- MY FIRST STORY(HIRO さん)
- スピッツ
普段の地声が中性的、または低くはない方におすすめなのがマイファスです。
とくに最近のHIROさんの歌い方を参考にしましょう。特徴的な非常に軽い声を真似するのが大事です。
ただしパワフルな激しい曲もあるので、真似する曲は「花0714」や「ハイエナ」あたりにしましょう。
ちなみに僕が一番参考にしたのもマイファスでした。
対して、普段の地声が太くて低い方向けにはスピッツがおすすめ。
高音になっても全然緊張感を感じさせない歌い方ですよね。
失敗してもいいので、あの余裕な感じをとにかく真似ましょう。
次に女性歌手です。
- 島津亜矢さん
- fhána(towanaさん)
とくにtowanaさんは非常に参考になるはずです。
高音でここまで余裕たっぷりに張りのある声が出てるのに、力みを全く感じないのは見たことがありません。
真似するときのポイント
私が例にあげた方たちには、共通の特徴があります。
それは、高音になっても口を大きく開けていないことです。
これが本当に重要です。口を大きく開けるほど高音は難しくなります。
所詮、ボイトレは喉の基礎トレーニング
たまにボイトレばかりやって、歌の練習を疎かにしてしまう人がいますが、それではだめです。
なぜなら、第一の目標は歌が上手くなることでしょう。
例えばサッカーが好きだからといってスクワットだけして足腰を鍛えても、サッカーが上手くならないのと同じです。
いくら喉の柔軟性を高めても、狙った音を出せる可能性が高まるだけです。
そもそもの狙いが外れていたら、上手い歌にはならないですよね。
たとえ高音が満足に出せない状態だとしても、歌の練習は絶対にするべきです。
最低でも週に一回、1時間程度はヒトカラで練習しましょう。
補足:「ミックスボイス」や「ベルティング」は必要ない
高音の中の特定の音質に名前をつけただけ
ミックスボイスは裏声が綺麗に混ざった状態とか、強い声は出せないとか言われますよね。
対してベルティングは、より口から出てる声で、ほぼ地声だとか、負担が大きいとか言われるでしょうか。
僕がボイトレを始めた15年以上前から、これらはまるで特殊な発声技術みたいに説明されることが多いですが、全くそんなことありません。
ましてや、別々の技術でもありません。声質を変化させれば簡単にどちらも再現できます。
声質の変化の度合いが極端な状態に、都合の良いようにそれっぽい名前をつけただけなんですよ。
僕も「ミックスボイスを習得しなきゃだめだ」と、結局それが何なのかよくわからないまま何年も練習してきました。
高音に余裕が生まれて辿り着いた結論は、単に「力を抜いても高音が出せる状態」を目指せば良いということです。
高音に余裕があれば、どちらも出来る
高音に余裕があれば、あまり声を張らずに息を漏らしたようにもできますし、声を張らずに息を漏らさないこともできます。
もちろん、声を張ったり口の中でより響かせるようにして、より地声感を強める事だってできます。
「力を抜いても高音が出せる状態」という明確な目標に向けて練習するべきものであって、その中の特定の声の出し方に焦点を当てた「ミックスボイス」などを目指すのは方向性がおかしいんです。
ご理解いただけたでしょうか?
まとめ:ボイトレで喉の柔軟性を高めつつ、歌手の真似をしよう
- 高音を怖がらない
- 力まない、脱力しない
- 喉の柔軟性を高める(複数の声の出し方+ビブラート)
- 高音で力みを感じさせない歌手を真似して歌う
より具体的にまとめると、
- 力まずに高音を出したとき、声が裏返ったり不安定になるのは、それが今のあなたの実力
- 喉の柔軟性を高めれば、力まずに高音を出しても安定するようになる
- 複数の声の出し方、ビブラートを極めよう
- 喉の柔軟性を高めつつ、力みを感じさせないほど高音が得意な歌手を真似する
- ボイトレだけではなく、歌の練習を必ずする
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